第41回・『さんびきのやぎのがらがらどん』その5
第41回・『さんびきのやぎのがらがらどん』その5
いよいよ本番の日。部屋の用意をしているうちに、私たちは、たいへんなことが起こりつつあるのに気がつきました。
日本人会はマンションの7階にあるのですが、そのエレベーターの扉が開くたび、今まで見たことも無いほどたくさんの親子が、続々とおりてきているではありませんか。
3基あるエレベーターは何回も何回も止まり、そのたびに新しい親子があとからあとからあふれ出てきます。その波は時間が近づくにしたがって、おさまるどころかますますふくれあがってきました!
こんな光景これまで見たことがありません!
「これで、お話会の部屋に入りきれるの?」
私たちは青ざめました。
人形劇、しかもお姉さんたちの合唱付き。そして無料。とはいっても、みなさんがこんなにも期待してくださっていたとは。
記録係も二百人を数えたところでもう数えきれなくなりお手上げになりました。
パニック寸前になりながらも、とにかくできるだけきっちりつめて入ってもらいます。エアコンを最大限の低温にしても、ぎゅうぎゅうづめの子どもたちのおでこからは、玉の汗がつたいはじめました。と、看護婦だったお母さんが急いでさけびました。
「ドアと窓を開け放して!酸欠になる!」
異常な熱気の中、絵本の読み聞かせとストーリーテリング、そしてコーラスサークルの歌が終わり、いよいよ舞台の幕を開ける時が。
そこに現れたセットのりっぱさに、観客も予想以上にすごいと思ったのか、歓声と叫び声で騒然となりました。ヤギたちの人形が登場すると、騒ぎはさらにすごいものになりました。
これで、セリフが聞こえるのか!
しかし、ダーン、と扇さんのピアノ伴奏の音が響き、コーラスサークルの歌がそれに続くと、たちまち子どもたちは聴く姿勢になりました。
それでも終始子どもたちは大喜び。もりあがりの中、劇はなんとか無事に終わりました。トロルの恐ろしさに、約三名の子どもが退場しましたが・・・
帰りかける観客のお母さんたちが、
「ちょっと暑かったけど、おとくな催しだったわよねー」
と言い合っているのがへとへとになった私たちの耳に聞こえました。
くたびれながらも、私たちは「おおきな仕事をした」というめったに得られない感覚に酔ったのでした。
第2章「オクサンたち進化する」これにて無事終了、次回第3章「タイ国ブックフェアへの道」もよろしくお願いしまーす。
なお、この『がらがらどん』のお人形劇は、新人さんが入ってくるふしめふしめに演じてきましたが、トロルはずっと私が担当しました。おかげさまで、最後のほうは、ほんとに上手に(自分で言うか!)になりました・・・
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